『 千年女優 』
見ました (~▽~*)
「千年女優」だけでなく、
「妄想代理人」「パプリカ」など、
今敏さんの作品をここ数日でもって、
衝動的に一気見しております。
別に理由とかは特になくて、
私はしばしば唐突に、
気になったものや、気に入ったものを、
ブレーキが効かなくなったかのように、
観たり・聴いたり・食べたりする性分な
のです。
気が付いたら一週間以上も、コンビニで同じおにぎりを買って食べていたとかいう
ことがあります。病気です (~▽~;)
飽き飽きするまで同じ作品世界に触れ続けるのが好きなのです。
そう、『千年女優』
面白かったです (~ー~*)
今敏さんの作品は現実と空想の境がはっきりしませんねw
現実かと思ったら、撮影(劇中劇)のワンシーンだし、
現代の人物と過去の人物が同時に会話したりするし。
昨今のテレビや映画のように画面の前に座って見てれば良いだけの受動的な作品ではなく、
これが現実なのか、過去なのか、今なのか、必死に喰らいついて見なきゃいけない。
そういう意味で、受動的な視聴者に対する挑戦状のようなものを感じます。
だらだら見るんじゃない。 必死で見ろ、とw
ラストシーンのセリフ。
賛否両論あるみたいですね。
「だって、あたし・・・、
あの人を追いかけてる私が好きなんだもん」
ネタバレ保護のため白字にしてます。
ネタバレOKの人はカッコ内を反転して見てね。
また、この記事の冒頭のタイトル文字をクリックしていただけると、
ラストシーン含むPV的な動画が見れます。
でもできれば、映画本編をフルで見てほしい (~ー~*)
主人公「千代子」は幼い頃(戦時中)、一瞬会っただけの絵かきの男性に恋をします。
その絵かきは思想犯で、警察に追われて満州へ逃亡。
千代子は彼に会いたい一心で、満州で映画を撮るという映画会社に入り、女優になる……
というわけで、
そこから千代子は一生をかけて、その男性を探し続けるのですが、
その最後の最後で ↑のあのセリフです。
まぁ、確かに「なんじゃそれ!?」って感じにも聞こえますねぇ (~▽~;)
あんだけ必死に追いかけ続けてきたのに、結局、彼のことなんてどーでも良かった、自己満足ですか
そう思われても仕方ないセリフではあります (~ー~;)
でも私は好きでした、このセリフ。
このセリフ、実はこのラストシーンに唐突に出たものじゃなくて、
千代子のライバルである先輩女優「詠子」や、
千代子の妄想に登場する「謎の老婆」に対応してると思うんです。
「詠子」は言うわけです。
自分は千代子に嫉妬していた。若さが羨ましかった。 ――と、
きっと、一人の男性をずっと想い続けている千代子の純真さも羨ましかったのでしょうね。
映画という“虚構を作る世界”に携わり、詠子は純真さとは真反対のしたたかでズル賢い女でした。
というか、映画の世界で生きるうちに、そういう女にならざるをえなかったのだと思います。
しかし千代子はその映画の中にいても、ずっと純真なままなのです。
「なぜこの子は、自分と同じようにしたたかで醜い女にならないのか」
詠子は千代子に嫉妬していました。
そして謎の老婆。
老婆は千代子に言います。
お前が憎い。憎くて、憎くて、そして愛しくてたまらない。
で、ネタバレになるのですが、
この老婆は実は千代子自身でした。
自分の年老いた姿だったのです。
千代子は一生をかけて、あの絵かきの男性を追い続けましたが、
しかしその一方で、自分が年をとり、もはやあの男性出会った頃の、「少女の千代子」ではないことに
気付き始めていました。
そして、老いた自分の姿を見られたくない。
その恐怖心こそが、謎の老婆の姿となって現れていたのでしょう。
しかしこの老婆、
実は一瞬、「詠子」の姿と重なるシーンがあります。
つまり、「千代子=老婆」でもあり、「老婆=詠子」でもある。
つまり、「千代子=詠子」なのです。
いや、もちろん同一人物という意味じゃあないですよ (~▽~;)
そうではなくって、
実は千代子にも詠子と同じような嫉妬心や憎悪があった、ってことです。
詠子が思っていたような、どこまでも可愛いだけのお嬢さんじゃなかったってことですね。
それは自分自身に向けられた嫉妬。
いつまでも子供のように純真無垢でいる、恋を追いかけ続ける自分への嫉妬です。
いつまでも子供のままではいられないのだということを、千代子は心のどこかで知っていて、
その自分に対する矛盾が老婆の姿となって現れていたのでしょう。
だからこそ、老婆は詠子の姿にオーバーラップしたのです。
逆に言えば、詠子と老婆が重なったあの瞬間が、
千代子が自分自身の“老い”を自覚した最初の時だったのかもしれません。
作中に登場するキーアイテム 「カギ」
千代子が絵かきの男性から預かって、いつか返す(=会う)約束になっているカギですが、
千代子が「これは何のカギ?」と聞くと、彼はこう答えます。
一番大切なものを開ける鍵さ
しかし結局、作中では何のカギなのかも、
開けたら何が入っているのかも明かされませんでした。
でも考えてみて下さい。
千代子がいつまでも純真で、彼を想い続けていられたのはなぜですか?
老婆の幻影に悩まされながらも、純真でありつづけられたのは?
そう。
このカギが千代子のよりどころだったから。
そしてここで私は上手いことを言います。
千代子はその“カギ”で鍵をかけ、
老婆を心の中に閉じ込めていたんじゃないか、と
実際、千代子は作中でカギを失くしたとき、
絵かきの男性のことを諦めて、別の男と結婚します。
カギを失くした千代子は、もはや純真な千代子ではなくなっている、と。
しかしカギ(実は結婚した男の策略で隠されていた)を見つけた千代子は、
再び一途な想いを取り戻して絵かきを探しにいくのです。
そのカギは千代子にとって、文字どおりキーアイテムなのですね。
じゃあ、そのカギを開けて出てくるものは何なのか?
「一番大切なものがしまってある」はずのそのカギの中身は?
現代の千代子、つまり“老人になった千代子”が、
インタビュアーからそのカギを渡され、出てきたセリフは――
「だって、あたし・・・、
あの人を追いかけてる私が好きなんだもん」
老人の千代子=老婆は、少女千代子の純真さ・若さを妬んでいました。
年老いた自分の姿を憎んでいました。
でも最後に、カギを開けて、このセリフが出たのです。
少女千代子の純真さ、強さはカギの力を借りた“作りもの”だったかもしれない。
言ってみれば、千代子は “千代子という少女” を演じてきた女優だったのかもしれない。
そのカギでしまってあった一番大切なものとは
千年女優「千代子」 そのものだったのです。
「それは?」
「一番大切なものを開けるカギさ」 ,
「大切なもの……?」
「当ててごらん」 ,
「分からないわ……
でも、まだ言わないで。
明日までの宿題にするわ。約束よ」
良かったね、千代子。
約束、守れたね。