中島みゆき「Nobody is right」 歌詞の意味を考える長文1



争う人はー 正しさを説くー (~□~ )


正しさゆえのー 争いを説くー (~□~ )




以前、「ファイト!」の記事を書いたところなかなか好評だったということで、
まさかまさかの、中島みゆきさん特集“第2段”!

今回は 「Nobody Is Right」 の歌詞を読んでいきたいと思います。


「Nobody is Right」 ( ノーバデ イズ ライト )

 Nobody は “誰も~~ない” ですから、

直訳すると 『私の右に出るものはいない (。-`ω-)フンス! 』 ですね。


違いますw


Rightには“正しい”という意味もありますので、
Nobody is right は “正しい人などいない” という意味になります。(直訳)



この記事の冒頭で紹介しました「争う人は正しさを説く――」という部分は、
先日からTVのCMでも流れていますので、聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。
宮崎あおいさんが、女性コーラスと共に歌っていますね。
  CM元は「アース ミュージック&エコロジー」という、女性服のお店です。


  中島さんver.は見つからなかった…(´・ω・`)
  「I Love You, 答えてくれ」というアルバムに収録されてますので、
  是非入手して
聞いていただければと思います(スキル:商売上手Lv1)


でも、実はこのCMがですね、ちょうど時期的なものと相まって、
“安保法案反対の歌じゃないか”、“政治的意図のあるCMじゃないか”として微妙に話題になって(炎上して)おります。


でも、違うの。

「ファイト!」がCMで聞く応援歌風のワンフレーズが、全体を聞くと実は単なる応援歌などではなかったように、
この「Nobody is Right」も良く聞けば、月並みな戦争反対の曲じゃない。反対派にも賛成派にもならない、誰の味方にもならない曲なのです。
  さすが中島さん、相変わらずの突き放しっぷりですねw



さて、それではさっそくこの曲の歌詞を読んでいきましょう。

――と言いたいところですが、その前に諸注意です。

今回の考察記事は、最終的にものすごく教訓めいた、ものすごーく説教くさい内容になります。
なぜなら、この曲は「正しさとは何ぞや?」「正しい人とは何ぞや?」みたいな感じの話だからです。


そういう話が苦手な人。

他人に正義がどうこう言われるのが何だか気に食わない人。


そのような方は是非、今のうちにこのページから引き返すことをオススメします。
 




  もしも私が全て正しくて とても正しくて 周りを見れば
  世にある限り全てのものは 私以外は間違いばかり

  もしも貴方が全て正しくて とても正しくて 周りを見れば
  世にある限り全てのものは 貴方以外は間違いばかり

  辛いだろうね その一日は
  嫌いな人しか 出会えない
  寒いだろうね その一生は
  軽蔑だけしか 抱けない

  正しさと正しさとが相容れないのは いったい何故なんだ?
  Nobody is Right. Nobody is Right. Nobody is Right. 正しさは
  Nobody is Right. Nobody is Right. Nobody is Right. 道具じゃない


  悪い人などいないだなんて あいにくですが頷けません
  正しい人こそいないんじゃないか カンペキ正しいってどういう人だ

  争う人は正しさを説く 正しさゆえの争いを説く
  その正しさは気分が良いか
  正しさの勝利が気分良いんじゃないのか

  辛いだろうね その一日は
  嫌いな人しか 出会えない
  寒いだろうね その一生は
  軽蔑だけしか 抱けない

  正しさと正しさとが相容れないのは いったい何故なんだ?
  Nobody is Right. Nobody is Right. Nobody is Right. 正しさは
  Nobody is Right. Nobody is Right. Nobody is Right. 道具じゃない

  Nobody is Right. Nobody is Right. Nobody is Right. 正しさは
  Nobody is Right. Nobody is Right. Nobody is Right. 道具じゃない



「ファイト!」の詞と比べると、比喩的な表現は少なめですね。
わりとストレートにメッセージを伝えているので分かりやすいかと思います。



1.  もしも私が全て正しくて とても正しくて 周りを見れば
    世にある限り全てのものは 私以外は間違いばかり

    もしも貴方が全て正しくて とても正しくて 周りを見れば
    世にある限り全てのものは 貴方以外は間違いばかり


“もしも私が全て正しかったら”
“もしも貴方が全て正しかったら”

全てにおいて完璧に正しい人がいるとしたらどうなるだろう?

きっとその人は、他の誰かが少しでも間違ったことを言っていればすぐにその間違いに気が付くのだろう。


「さくらさん、あなたはズバリ間違っているでしょー!」

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正井 正夫 (ただしい ただお)


そう、仮にこの正井正夫くんを“全てにおいて完璧に正しい”人物だと仮定する。

彼は全ての“正しさ”を知っている。
どんな問題にも完璧に正しく答え、完璧に正しい対処策を講じることができる。


つまり、正夫くんと全く同じ意見の人間は、正しい人間だ。
少しでも違う意見の人間は、間違っている人だ。


へい、へいw どうかな?
あなたは正夫くんとカンペキ同じ意見が言えるかな?
一問も間違わずに全問正解できるかな? へいへいw (゚∀゚)ヘイ!!



――って、全問正解じゃないとダメってのは、ちょっと意地悪なやり方でしたねw

そう、私たちは問題によっては正夫くんと同じ意見になることもあるだろうし、
違う意見になることもあると思う。

つまり、私たちは正しいことを言ったり、間違ったことを言ったり、
その時々で○と×を繰り返しているわけです。

きっと、正夫くんから見れば、私たちはさぞ間違いだらけなことばかり言っていることでしょうw (~▽~;)

それが、
    もしも貴方が全て正しくて とても正しくて 周りを見れば
    世にある限り全てのものは 貴方以外は間違いばかり
ってことですね。
 


2. 辛いだろうね その一日は
   嫌いな人しか 出会えない
   寒いだろうね その一生は
   軽蔑だけしか 抱けない

ここのフレーズ、地味ながらも密かにストーリーが急展開してますよ (; ・`д・´)
この歌を読み解くにあたって重要な部分です。

第1パートで、正井正夫くんは、
周りの人が大なり小なり間違ったことばかり言っていることに気付きます。


すると、この「辛いだろうね~~」のパートでは、
唐突に正夫くんは皆のことが嫌いで、皆のことを軽蔑しているスーパーヤサグレモードに陥っているのですw


「もはや愛など要らぬッ! 敵は全て下郎ッ!!」

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正井 正夫 (ただしい ただお)
 
 
どうした、正夫!? 何があった、正夫!? 心を開いてくれ、正夫ぉぉー!?


なぜ正夫は皆のことを嫌いになってしまったのか?
ここには、この歌の最大のテーマともいえる、悲しく愚かな“人間心理”が隠されています。



正夫は、常に正しいことを言います。
それに対し、私たちは間違ったことを言います。

例えば、
正夫が「地球が太陽の周りを回っているんだよー」(地動説)と言い、
しかし、私たちが「そんなことはない。太陽が地球の周りを回っているんだぞー」(天動説)と言う。
そんな感じだとしましょう。

正夫は懸命に地動説の正しさを訴えますが、
私たちは天動説を本気で信じているので、正夫の考えに従いません。

「おい、正夫よ。お前は何を言っているんだ?」
「地面が動くなんてあるわけないじゃないか」
「地面が動いたら、人間はどこかに転げ落ちていってしまうぞ。
  人間が転げ落ちていかない以上、地面は動いていないのだ」(論理的!)

――と、
私たちから見れば、正夫の方が間違ったことを言っているように見えるのです。


そう、↑↑これ重要。


人間というのは、“自分が正しい”と思っている時は、“相手の方が間違っている”と思うものなのです
(この辺りの心理については「認知バイアス」などを勉強してみると面白いと思います)

そうなると、正夫くんは私たちのことをどう思うでしょう?

「どうして僕の言うことを理解してくれないんだ!?」
「あまつさえ僕の方を間違い扱いしてくるぞ! 失礼な奴らめ!」

――と、きっとそんな風に “正夫の考えを理解できない私たち” に対して猛烈な不満を感じることでしょう。

正しさが伝わらない。ましてや自分の正しさを否定される。
これはとても悔しいことです。

この“猛烈な不満”こそが、「嫌い」や「軽蔑」の感情へと繋がります。



ただし、もし正夫くんが“間違っている相手にも正しさを分からせることができる正しい教え方”を知っていれば、この問題は簡単に解決します。
正夫くんは完璧に正しい人なので、恐らくそんな素晴らしい教え方も知っていることでしょうw

ですが、敢えてここではこの方法は使わないこととします。
理由は後で説明します。



ちなみに、例として使った地動説・天動説については、
紀元前から地動説を唱える学者はいましたが、実際にその正しさが理解されたのはなんと17世紀以降になってからです。

地動説が正しいと知っている正夫くんは、実に2000年以上に渡って天動説派からウソつき呼ばわりされ続けることになるわけですねw そりゃグレるわw (~▽~;)

しかも、この正夫をウソつき呼ばわりする天動説派というのは、実は庶民や宗教家などといった科学的な素人だけではありません。 当時の最先端の科学者たちも天動説を信じていました。
当時最先端の科学的な研究が、「天動説は正しい。地動説は間違い」と言っていたのです。



地動説・天動説の話が、逆に分かりづらくしちゃったような気もしますが……、
まぁ、気を取り直して(?)次の歌詞フレーズへと進んでみましょう (~▽~;)


3. 正しさと正しさとが相容れないのは いったい何故なんだ?


またしても急展開! (~□~;)

正しさと正しさ。 つまり、正夫と正夫! 2人の正夫!(ぇw

イメージ 3


はい、ここで思い出して下さい。

この歌詞の一番最初のフレーズは、
 “もしも私が全て正しくて ~~ 私以外は間違いばかり”
 “もしも貴方が全て正しくて ~~ 貴方以外は間違いばかり”  でした。

お分かりですね。
この “私” と “貴方” こそが2人の正夫なのです。


もちろん、私も貴方も“全てにおいて正しい”と言い切れるほど完璧な人間ではないという自覚があるでしょう。
自分に欠点や弱点があることも自覚しているはず。

でも、何かの問題について自分の意見を言うとき、
「僕はこう思うぞ!」と発言するとき、

少なくともその時、その問題については“自分が正しい”と思っているのではないでしょうか?
自分で間違っていると思っている意見を言う人はいません。
意見を言うからには、人は誰しも自分の意見が正しいと思っているものなのです。



そう、 自分が正しいと思っている“私” と、
       自分が正しいと思っている“貴方”

しかし、“私”と“貴方”の考えは当然違います。


そして、先ほど私はこうも言いました。

人間というのは、“自分が正しい”と思っている時は、“相手の方が間違っている”と思うものだ、――と。


つまり、“私”も“貴方”も、「自分こそ正しくて、自分と違う意見を言う人は間違っている」と思っている。 お互いに、そう思っている。

そして、「この正しさを理解できないなんて、なんてバカな奴なんだ!」 と、
“嫌い”や“軽蔑”の感情を抱くのです。 お互いに、そう感じているのです。
 



4. Nobody is Right. Nobody is Right. Nobody is Right. 正しさは
   Nobody is Right. Nobody is Right. Nobody is Right. 道具じゃない

Nobody is Right. (正しい人などいない)
  Nobody is Right. (正しい人などいない)

正しさは 道具じゃない


いわゆる、この曲のサビですね。
この部分の意味は、2番の歌詞も読んだあとの方が分かりやすいと思いますので、一旦後回しにしましょう (~ー~*)


→つづく